人はどう生きているのでしょうか。人生ってなんでしょう。私はこれを、人生行動科学と呼んでいます。行動という概念は、あまりに日常用語すぎて、改まって定義を聞かれると困りますよね。では暮らし、つまり生活とはなんでしょうか。こちらも難問です。生活も人生も、ひとりひとりに固有で主観的な自分という側面と、客観的な社会(世界)における自己という側面が折り合ったものであり、普段あまり自覚を伴わないものであるため、改まって定義を求められると困ってしまうのかもしれません。さらには、精神とは?社会とは?・・・
このように私は、長い精神科臨床や地域精神保健活動の経験から、人の行動とそれに関連する日常用語を再定義し、人々の多様性と包摂が当たり前に保障される社会の実現のために、新たな人間行動科学を創っていきたいと考えております。
ヒトの脳は、社会における生活や人生を成立させるために進化を遂げてきた過程を反映しています。ホモ・サピエンスになってからは、脳の構造や機能の設計図はほぼ変わっていませんが、人間の脳が集合として生み出す社会・文化・人工環境の変化サイクルは加速化する一方で、脳は再帰的にその影響を受けます。また、集団サイズが増えれば増えるほど、何らかの個人側の特性や状況にもとづいて、多数派と少数派に分かれ、多数派が多数派にとって適応しやすい社会を形成する傾向が強まります。したがって、脳科学を、時代、社会、地理的環境などとの相互作用を考慮に入れずに進めると、その成果は、diversity & inclusionの理念とは逆の方向に利用されかねません。
WINDIとは、World-Informed Neuroscience for Diversity and Inclusionの略で、神経・行動科学を、多数派と少数派の研究デザインの段階からの共同(co-production)により、社会(世界)との相互作用性を熟考した(-informed)うえで進め、diversity & inclusionに貢献しうるものとしたい、という意味が込められています。
WINDIについての詳しい説明はこちら:
https://wind-v.com/